京都山科「音羽・大塚・音羽川」地域・二千年の歩み

鏡山次郎　作

第一章　ふるさと山科　二千年の歩み

　以下の文章は、「京都山科『音羽・大塚音羽川』地域・２０００年の歩み」の「第一章　ふるさと山科　二千年の歩み（一）はじめに」にあたるものである。

はねず踊り

（一）はじめに

　私たちの故郷(ふるさと)山科は、豊かで美しい。北は安祥寺山や諸羽山、西は花山山や六条山や稲荷山、東は音羽山や行者の森など、三方を美しい山々に囲まれ、盆地となった平野部には四ノ宮川・音羽川・安祥寺川・旧安祥寺川・山科川が流れ、四季折々の景観をかもし出す。春には琵琶湖疏水沿いに桜が咲き乱れ、夏にはホタルが飛び交い、四ノ宮をはじめ各地で地蔵盆が行われ、秋には紅葉が錦織りなし、各神社では一斉に「山科祭り」が盛大に行われる。冬には雪降る中「赤穂義士祭」「二九（二の講）」が行われ、春の「はねず踊り」を待つ。「豊かな自然と美しい景観、それに伝統行事が溶け込んだまち」、これが山科である。

　私たちの故郷(ふるさと)山科は、多くの史跡と文化遺産を持っている。毘沙門堂・勧修寺(かじゆうじ)・随心院の三つの門跡寺院をはじめ、日向大神宮・岩屋神社・山科神社・大石神社・三之宮・諸羽神社・若宮八幡宮など多くの神社や、元慶寺・東西御坊・岩屋寺・華山寺・西宗寺・大乗寺・徳林庵・法厳寺・本圀寺・仏光院・山科聖天・歓喜光寺をはじめとした多くの寺、多数の名所旧跡。旧東海道・奈良街道などの歴史的街道、多くの史跡と文化遺産がある。「名所・旧跡を持つまち」、これが山科である。

　また、私たちの故郷(ふるさと)山科は、中世「山科七郷」、近世「山科郷士」などに代表される「歴史的伝統と自治の歴史を持つまち」である。そして砥粉などの伝統産業と共に、清水焼団地、仏壇仏具扇子団地など様々な伝統文化・技術があると共に、伝統産業の技術を活用した金属箔・金属粉などを取り扱う先端産業もある「伝統文化・技術と先端産業が共存しているまち」でもある。

　しかし、こうした歴史・伝統・文化を持つ山科であるにも関わらず、残念なことにこの事が山科区内外の人々にはあまり知られてはいない。だから、第一に、この山科に住んでいる人にこのことを知ってほしいと思う。そして、山科区民だけでなく、山科に通勤・通学で通う人たちや、観光で訪れる人たちに、これまで知らなかった山科の歴史や隠れた魅力に気づいてほしいと思う。そのことが、私たちの故郷(ふるさと)山科への愛着を深め、地域の発展や魅力的なまちづくりにつながっていくことではないかと思っている。