ふるさとの会文章部会　山科人　編

（ふるさとの良さを活かしたまちづくりを進める会　文章部会　部員）

東山緑地公園の雪景色（写真は記事と直接関係はありません）

予防的計画的通行止め

南岸低気圧の影響で積雪が予想されている。先日（２月9日～11日）に続いてこの13日からも首都高速の「予防的計画的通行止め」が発表された。東京は1月6日に4年ぶりという大雪警報が出た。この時、都心では積雪10センチだったという。「こんなに降るとは思わなかった」気象庁は、そのあとこの2月の2回の南岸低気圧には慎重にならざるを得なかったのだろう。そこで予防的措置として交通関係にあらかじめ通行止めや運行休止を呼びかけたと思われる。

現在、たくさんのデータからさまざまな予測ができるようになった。気象異常・地震による被害、１週間後の感染者数、偏差値と合格大学、生活習慣と病気、保険の掛け率など。未来をデータから割り出し、予測していく。AIという単なるコンピューという計算機だけではないものが現れることでますます人類の未来を、明日のことから数十年先までが詳しくわかるようになってきた。

ブラッド・ピットの元妻だったアンジェリーナ・ジョリーという美しく、豊満な肉体を持つ女優がいるのをご存じだろうか。彼女は自分の遺伝子に、乳がんや卵巣がんになるリスクが高いことを医者に指摘され、予防のために切除手術をした。このことから世界中でセンセーショナルな話題となり「アンジェリーナ効果」と呼ばれている。

ずいぶん昔に読んだＳＦ小説で未来を事細かく示す「暦」の支配する惑星にたどり着いた男の話があった。暦は次々と更新されていく。見知らぬ世界にやってきた男はこれを利用して裕福な社会的地位を得たのだった。ところが、自宅が火事になり、財産はおろか妻までもなくし、いっぺんに不幸が訪れる。「暦で自分の家族のことを調べなかったのかい？」と隣人に言われ愕然とする男。そんな内容だった。遠い関係のない世界だと思っていたことが、今まさに現実となってきた。

「雪が降る予定だから、降る前から通行止めにします」　晴れた空を見上げながら、違和感を持つ人は少なくないはずだ。雪は突然降るし、朝に積もっている雪を見てうろたえたり、何気にうれしくなったりするのが雪の風情だと思う。

兼好の『つれづれ草』の有名な「雪のおもしろう降りたりし朝」（31段）で始まる章段がある。「雪がこんなにおもしろく降った日の手紙に、雪のことを何にも触れないなんて無粋な人だ」という返事がきた、という内容である。

「おもしろし」という形容詞は「目の前がぱっと明るくなる」がもとの意味で、まさしく朝に窓から雪の景色が飛び込んできて初めて気が付き、驚くのである。

世は「ひがひがしからん」（情趣を理解できない、無風流な）人の世界となってきたのだろうか。（山科人　２０２２．２．２２

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