やましなの歴史

第八章　現代のやましな

鏡山次郎　作

春の山科疏水（安朱橋付近から東を眺める）

現代のやましな −−郊外住宅地として、人口や学校も増えた−−

山科川沿いに建つマンション（西野）

戦後になって、山科は大きく発展した。　1955（昭和30）年頃から、京都市の住宅地として開発の波が押し寄せ、人口が爆発的に増え、終戦後当時3万人だった人口が50年間で13万6000人になった。 　1958（昭和33）年には東山ドライブウェーの起工式が行われ、また同年10月には名神高速道路の京都区間の起工式が山科で行われ、1963（昭和38）年に開通した。また翌年の1964（昭和39）年には国鉄東海道新幹線が六条山と音羽山の両トンネルを抜けて山科中央部を横断するようになった。1965（昭和40）年には、外環状線（山科〜観月橋間）が完成し、1967（昭和42）に、五条バイパス（現国道一号線）が開通した。1972（昭和47）年には、大石道が迂回するコースとなる花山バイパスが開通。1974（昭和49）年には北陸方面へ向かう湖西線（山科〜近江塩津・敦賀）が開通し、1997（平成9）年には、地下鉄東西線が開通し「御陵」「山科」「東野」「椥辻」「小野」などの駅ができた。京阪電車京津線「九条山駅」「日ノ岡駅」は廃止、京阪電車は京津三条〜御陵間が地下鉄となった。地下化に伴い、蹴上〜御陵間の三条通（四ノ宮−四ツ塚線）も拡張された。 　こうして現在の山科の交通網の体系が完成することとなったのである。 　人口の爆発的増加は同時に公立学校の建設ラッシュももたらした。終戦の時点では、山階・勧修・鏡山・音羽の４校であったのが、小学校では安朱・大宅・陵ヶ岡・山階南・百々・大塚・小野・音羽川・西野の13校に増えた。また中学校は1947（昭和22）年に開校し2年後に現在地に移転した山科中学だけであったが、その後、花山・音羽・安祥寺・勧修・大宅と6校に増えた（公立のみ）。東総合支援学校を含め、京都市立の小・中学校は合わせて20校になっている。 　現在の山科は、1962（昭和37）年に京焼・清水焼の生産団地（清水焼団地）が建設され、京仏具・扇子の生産団地もある。山科は砥粉の産地で、数は少なくなったが現在も製造工場がり、伝統産業の技術を活用した金属箔・金属粉などを取り扱う先端産業もある伝統産業と先端産業が共存している地域となっている。 　農業は宅地化により衰退したが、それでも米のほか、きゅうり・ 大根・なすなどの近郊野菜も生産されている。また、京の伝統野菜である「山科なす」も最近注目を浴びてきている。南部では観光農園が運営されており、ぶどう・いちご・さつまいもなどを観光客向けに栽培、販売している。 　現在の山科は多くの魅力を持っている。行事では随心院「はねず踊り」、清水焼団地「陶器まつり」「楽陶祭」、年末の「山科義士まつり」などが有名であるし、春や秋には山科疏水や毘沙門堂・大石神社・ 勧修寺、日向大神宮などへ、区外からの観光客も多い。 　このほかにも,秋の山科各神社で一斉に行われる「山科祭り」や、小山地域の「二九（二の講）」、夏の地蔵盆など、各社寺・各地域で行われている伝統行事も多く残っている。 　これからの山科は「観光のまち」とも言われている。しかしそのためには基盤整備などまちづくりの課題も多い。