牛尾山平成２５年台風１８号被害「復旧」のようすと今後の課題

−あれから２年経って牛尾山ハイキングコースはどうなっているのか−

平成２７年（２０１５）９月１６日　鏡山次郎　作

　

崩落の木々・土砂でふさがれた牛尾山ハイキングコース（2015.9.18）と現在（2015.9.5）
 平成２５年（2013）９月１８日報告 平成２７年（2015）９月１６日報告 

　山科疏水沿いと共に、牛尾山ハイキングコースは、山科区民にとって自然を満喫できる素晴らしい場所です。小山地域を経てハイキングコースに入り、桜ノ馬場から牛尾観音（法厳寺）へと歩かれた区民の方も多いと思います。

　ところが、この区民の宝といえる牛尾山ハイキングコースが、先の台風１８号により大きな被害を受けています。

　平成２５年（２０１３）９月１５日から１６日にかけて日本に上陸した台風１８号は、日本各地と共に、京都でも福知山や市内嵐山などに大きな被害をもたらしましたが、山科区でも四ノ宮川をはじめとした川の氾濫、御陵から水が入り地下鉄東西線が不通になるなど大きな被害を生み出しました。そして、この牛尾山ハイキングコースも甚大な被害を受けました。

　私は、山科に生まれ、山科に育って６０余年になりますが、今まで何回も、何十回も牛尾山ハイキングコースを訪れましたが、こんな姿は初めて見ました。ただただ呆然とするばかりで、涙が出てきます。

　多くのみなさんに、このことを知っていただき、復興への手助けをしていただければ幸いです。

　なお、私は現地をどうしても確かめなければならないある事情があって、お寺さんの了解のもとに入山しましたが、現在この牛尾山ハイキングコースを物見遊山や興味本位で見に行かれるのは、場所によっては危険を伴うために、控えて戴いた方が良いと考えています。（写真は2013.9.18撮影） 		 　ご存じのように平成２５年９月１６日、台風１８号により、京都や山科一円はもとより、音羽山（牛尾山）一帯も、大きな被害を受けました。とりわけ、山科区民に親しまれている「牛尾山ハイキングコース」は、８カ所で山崩れが起き、土砂が流入し道路が寸断されて通行止めとなり、長い間、多くの区民にとって、豊かなふるさと山科の自然や景観・史跡などを楽しむことができませんでした。

　私や私の所属している「ふるさとの会」では、山科区民の貴重な財産である音羽山（牛尾山）の自然や史跡を守りたいと、被害直後から実態調査に入り、被害の様子を地図パネルにして区内各所で展示すると共に、同年（２０１５年）１１月１９日には山科消防署の大会議室をお借りして、「牛尾山ハイキングコース台風１８号被害報告会」を開催させていただきました。

　あれから２年たちました。この２年間の間に、お寺の関係者、地元住民の方々、議員の方々、役所の方々など、多くのみなさまの懸命なご努力によりまして、本年３月末にようやく「復旧」し、ハイキングコースが開通する運びとなりました。

　しかし、「復旧」はされたものの、同時にまだまだ残された課題も多く、今後とも区民のみなさまはじめ、関係各位のご支援が必要な状況でもあります。

　そこで、私や「ふるさとの会」では、台風被害から２年が経ったのを機に、復旧の現状と残された課題につきまして、多くの方々にご報告の機会を持ちたいと、この報告会を企画させていただきました。「復旧」の下見行った時の写真を掲載します。（写真は2015.9.5撮影）  
↑（１）「鎌研ぎ橋」「蛙岩」を経て砂防ダムあたりに来ますと、舗装されている道路上に、流れてきた小石が埋まっています。写真のガードレールの右が川側、中央は舗装された登山道だった所です。 ↑（１）砂防ダム近くのカーブになる場所は、山側（写真左手）に、土砂崩れを防ぐための石が積み上げられ、ガードレール近くまであった石（本来は土砂であったものが土が流れてしまっていた）もすべて取り除かれています。
 
↑（２）もう少し上に上がりますと、谷筋にあたるのでしょうか、山側から流れてきた土砂で登山道が埋まっています。写真のガードレール左側が川で、中央は登山道です。  ↑（２）上記（１）の反対側を見た所で、大きな石も殿除かれてますが、今後谷筋から大量の土砂が流れてきたとき、どの程度防げるかはわかりません。 
↑（３）登山道と川の間にあるガードレールも、土台の土が川側にずれて落ちているために傾いて危険な状況です。写真のガードレール右側が川で、左側は登山道です。 ↑（３）ガードレールとその下の斜面も崩れが修復され、川側は石で補強されています。アスファルトから見て道路の修復は川側半分と考えられます。
   
↑（４）登山道のいくつかの場所では、増水の時に土が削れられたのでしょう。ポッカリと大きな穴が開いて大変危険です。写真のガードレール右側が川で、左側は登山道です。  ↑（４）道路の陥没は、修復され道路の舗装も全面的に塗り替えられていました。写真では見えませんが、道路下も石で補強されています。 
↑（５）やがて登山道は、山側から流れてきた土砂によってふさがれてしまいます。ガードレールがようやく土砂を止めている格好です。写真のガードレール右側が川で、中央は登山道です。 ↑（５）呪聴の瀧から少し上のカーブになっている場所は、谷筋からの大量の土砂で埋まっていましたが、現在は土砂は取り除かれています。
 
↑（６）登山道は、山側から流れてきた土砂によってふさがれて、ガードレールの上が足元になっています。写真のガードレール右側が川で、中央は登山道です。  ↑（６）登山道は、流れてきた土砂を防ぐために、石が積み上げられています。 
↑（７）「夫婦の滝」付近のようすです。橋の上にまで小石が流れてきています。左に見える滝が「夫婦の滝」です。写真の左側が川で、中央は樫野橋です。 ↑（７）「夫婦の滝」付近のようすです。橋はきれいになっていますが、瀧の流れは、災害前とは大きく変わってしまいました。
   
↑（８）さらに上にあがると、登山道にはごつごつした石があり、山側からきた水が流れています。写真はガードレールの左側が川で、中央は登山道です。  ↑（８）「しずく谷不動尊」下の坂道のようすです。土砂は取り除かれきれいになっています。
↑（９）さらに上にあがると、「しずく谷不動尊」があり、山側から大きな石がたくさん登山道に落ちてきています。写真は右側が「しずく谷不動尊」で、中央は登山道です。 ↑（９）「しずく谷不動尊」の下です。道路の石は取り除かれていますが、谷筋については手当がされていません。再び土砂が出たときの対応は心配です。
 
↑（１０）「音羽の滝」を過ぎたあたりは、山側からの土砂崩れで、すっかり道が埋まってしまいました。また川側の道は削られて危険になっています。写真は、左側が川、中央は登山道ですが、真ん中に石が置いてあるのは、そこから左は崩れ落ちる危険があるために、通らないようにとの印だと思います。  ↑（１０）音羽の瀧の横の道路は、修復され通れるようになっていますが、道路の修復には川の下側から土台を積み上げています。 
↑（１１）「しずく谷不動尊」から少し上がった所に休憩所がありますが、そこも山から落ちてきた土砂をかぶってしまっています。写真は、手前が登山道、後が山側になります。 ↑（１１）道路の土砂は取り除かれているものの、休憩所そのものは何ら修復されることなく、災害時そのままの姿になっています。
 
↑（１２）「音羽の滝」から少し上がった所では、山側から落ちてきた土砂が、張ってあったフェンスを巻き込んで、登山道をふさぎ、川側のガードレールにまで達しています。写真は、左側が山側、中央は登山道、ガードレールの右側が川になります。  ↑（１２）崩れ落ちてきた土砂は取り除かれ、ガードレールも新しいものになっています。 
↑（１３）上記の（１２）と同じ場所を少しカメラを引いて撮影しています。手前が登山道の上、土砂の向こう側が「音羽の滝」側です。 ↑（１３）崩れ落ちた山側にはフェンスが張られ、緑の草も生えてきていますが、「山崩れ」対策として、果たして効果があるかどうかは、はなはな疑問です。
 
↑（１４）上記の（１２）と同じ場所で土砂がガードレールにあたっている所です。  ↑（１４）災害カ所の下の音羽の瀧に面した側面の石垣のようすです。 
↑（１５）今度は、山からずり落ちた土砂が道を塞いでしまっている所です。大きな樹木が立ったままずり落ちているのには、不気味ささえ感じさせます。写真は、右側が土砂が落ちてきた山側、中央は登山道、左が川側になります。 ↑（１５）山から崩れ落ちた土砂や樹木が道路を塞いだ場所では、土砂や樹木が取り除かれ、山側にはフェンスが張られています。
 
↑（１６）先の（１５）の所を反対側から見た写真です。  ↑（１６）（１５）ど同じ場所を反対側から見た写真です。  
↑（１７）谷を流れる川の中の、コンクリートの橋の土台部分です。橋はおそらく流されてしまったのでしょう。写真は、手前側が登山道です。 ↑（１７）関電の橋の土台部分まで、土が埋められていますが、橋そのものは修復されていません。
 
↑（１８）先の（１７）の少し上手では、川が土砂で堰き止められた為に、流れが変わって、水が登山道を流れています。登山道自身が川の本流筋になってしまいました。写真は上手から下手をみた所です。  ↑（１８）横石橋下の冠水していた道路は、川側に流れがつくられたため、水は来ていません。ただ道路側の樹木数が減っているのがわかります。 
↑（１９）先の（１８）を今度は下手から見た所です。登山道自身が川の本流筋になってしまっているために、川の中を歩いているのと同じで、流れが速く、よほど注意して歩かないと、足をとられてしまいそうです。 ↑（１９）先の（１８）を今度は下手から見た所です。傷ついた道路は、アスファルトで舗装されています。
 
↑（２０）さらに上流に行くと、登山道の川側がくずれ落ちかけている所が見られます。登山道では、このように、川側では、くずれ落ちそうな所がいくつもあり、道の中央か山側を気をつけて歩かなければなりません。  ↑（２０）横石橋上お道路で崩れたところは、修復され、コンクリートで固められています。 
↑（２１）登ってくる時にはわかりませんでしたが、写真のように登山道の下が削り取られてしまっていて、空洞ができている所もあります。 ↑（２１）川筋が９０度近くに曲がっていて、道路下が大きく削られた場所は、音羽の瀧と同じように土台から石を積み上げ、修復がされています。
 
↑（２２）変わり果てた「桜ノ馬場」の様子です。大量の土砂に押し流されてしまっていて、土砂が堆積し、もう「広場」はありません。トイレなどの建物も押し流されていて、影も形もありません。土砂がまだぬかるんでいて、奥へは行けませんでした。写真は、フェンスの右側が川側、中央はかつて「桜ノ馬場」だった所に土砂が流れ込んでいる様子です。  ↑（２２）「桜ノ馬場」も土石流や樹木の枝などが散乱していましたが、きれいに整地されています。ただ、トイレは修復されていません。 
↑（２３）「桜ノ馬場」にあった「鳥居」付近の様子です。鳥居は姿が見えません。足元は多量のぬかるんだ土砂で埋まっています。牛尾山参道方面に行くのには、竹や木ぎれなどの上を踏むようにして歩かないと、ぬかるみに足が取られて身動きできなくなってしまいます。写真の奥は、階段のあった場所です。 ↑（２３）「黒門」と呼ばれていた鳥居門はどこへ行ったのかわかりませんが、道はきれいに整地されています。
 
↑（２４）「桜ノ馬場」を過ぎて、階段のあった方に入った所です。牛尾観音（法厳寺）下の崖が崩れて、多量の土砂が土石流となって５００ｍほどある階段を一気に下り、桜ノ馬場に多量の土砂を積もらせたものと思われます。写真の中央奥から土砂が流れてきた跡がわかりますが、かつて階段のあった所で、階段はすっかり埋まってしまっています。このあたりに大きな石碑が建立されていたのですが、影も形もありません。  ↑（２４）「桜ノ馬場」を過ぎて、参道階段の下の場所です。土石流はきれいに取り除かれましたが、倒れて埋まった石碑や灯籠（片側）はそのまま放置されたままです。 
↑（２５）先の（２４）で大量の土砂が流れ込んできた階段のところです。写真の中央付近にわずかですが階段の姿が見られます。 ↑（２５）参道階段は、丸太が並べられて修復されていますが、両横の土砂はすでに後の雨のため、浸食が始まっています。
 
↑（２６）崩れ落ちた崖の様子です。牛尾観音（法厳寺）のすぐ横下の崖で、割れ目が本堂のすぐ近くにまで来ていて、今回、牛尾観音の本堂や建物は救われたものの、本当に間一髪の危険な状態であったことがわかります。  ↑（２６）法厳寺境内横の崩れ落ちた斜面の様子です。金網が張られ、草も生えてきている様子が窺えますが、写真の通り、まだまだ「応急処置」をしたという段階です。 
↑（２７）先の（２６）の崩れ落ちた崖の下の様子で、竹藪が崩れて土砂が流れた様子がよく分かります。写真は、牛尾観音すぐ下の階段の所で、土砂の流れている所の下に階段が埋まっています。大量の土砂は手前（山手）から、奥の方（桜ノ馬場方面）へ流れています。 ↑（２７）被害を受けた「竹藪」は当時のままです。斜面を下からみた様子です。
 
↑（２８）帰り道の様子です。登山道を土砂が埋めてしまい、気をつけて歩かなければなりません。写真は、右手が山側、中央は登山道、ガードレールの左が川側です。  ↑（２８）帰り道の同じ場所の様子です。山側に石が積み上げられているのがわかります。 
↑（２９）先の（４）で紹介した所で、ガードレールの土台もなくなり、登山道の一部は陥没して危険な所になっています。 ↑（２９）先の（４）で紹介した所です。
 
↑（３０）「大師堂」の休憩場所を山手側から見た所です。土砂や水が登山道にまで流入してきています。  ↑（３０）「大師堂」の休憩場所を山手側から見た所です。道路はきれいになっていますが、看板や休憩所の崩れはそのままになっています。 
↑（３１）登山道を塞いでいる土砂の山です。「谷筋」にあたる場所では、このような所がいくつも見られます。概算ですが、ふもとの小山から桜ノ馬場までには１０カ所ぐらいこのような所がありました。 ↑（３１）左と同じ場所の山手側です。うずたかく石が積み上げられている様子がわかります。
 
↑（３２）復旧はどうなるのでしょうか？山科区民の宝である「牛尾山ハイキングコース」の復興を、人任せではなく、山科区民の力で手助けしたいものです。  ↑（３２）全体として、「復旧」は道路部分のみで、「応急処置」的な感が否めません。道沿いの施設、石、倒れた樹木、景観の変化などはそのままで、今後、行政・寺院・地元住民が一体となって「復興」のために力を合わせて行く必要性を感じています。