鏡山次郎のやましな　温故知新

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鏡山次郎　作

偉大な征夷大将軍 坂上田村麻呂は山科にて眠る････西野山古墓【百々学区】

西野山地域にある“竹藪”（この近くで古墓が発見されたと言われている）

　この作品は、京都市山科区役所の公式アプリ「やましなプラス＋」のコラムに掲載された鏡山次郎の作品を、山科区役所の了解を得て掲載しているものです。

　ずいぶん前になるが「西野山古墓」に案内していただいたことがある。

　滑石街道にあるヘアピンカーブの所に石碑が建てられているのは知っていたが、そこからどう行くのかはわからなかったし、第一、案内していただいた方は崖の下の方からの道であった。

　だた、竹藪の中に入っても「この場所」と特定するのは難しい。「だいたいこの辺りかな？」という程度であった。知っておられる方もあると思うが、竹藪はタケノコを育てるために「土入れ」という作業が欠かせない。「タケノコ畑」に、土を重ねてふかふかの布団がかかっているようにするのだ。そのために、地形がよく変わっていく。

　「西野山古墓」は、大正８年（１９１９）に、地元住民が竹藪に土入れ作業をしていたところ、偶然にも、上部と周囲が木炭で覆われた木棺墓が発見されたものである。

　そして、京都大学により発掘調査が行われ、金銀平脱双鳳文鏡、金装大刀、鉄鏃などの副葬品が発見された。場所は、「西野山岩ヶ谷町」とされ、平安時代初期の貴族の墓であると推定された。

　遺物は昭和２８年（１９５３）に「山科西野山古墳出土品」として国宝に指定され、現在、京都大学総合博物館が所蔵している。

　当初は、周辺が中臣氏の根拠地であることから、被葬者はその一族とされていたが、昭和４８年（１９７３）に、地元の歴史考古学研究家である鳥居治夫氏が、条里制の復元研究結果にもとづき同墓が坂上田村麻呂（麿とも書かれる）の墓である可能性を指摘した。そして、平成１９年（２００７）、京都大学大学院文学研究科の吉川真司教授が『清水寺縁起』の弘仁２年（８１１）１０月１７日付の「太政官符表題」の記述と『山城国宇治郡山科郷古図』とを比較し、「坂上田村麻呂墓である」と結論づけた。

　吉川真司教授によれば「太政官符」の表題には田村麻呂の墓地に「山城国宇治郡七条咋田西里栗栖村の水田、畑、山を与える」という文言があり、この場所は『山科郷古図』と照合すると、今の山科区西野山岩ケ谷町にあたり、西野山古墓の場所と一致するという。

　該当場所には、昭和６０年（１９８５）、洛東ライオンズクラブが周辺道路際に「この付近西野山古墓」の石標を建立している。古墓そのものの場所は竹藪に覆われ、位置の特定ができておらず、京都市教育委員会が１９７０年代に調査を行った際にも発見できなかったとされ、現在では、もう少し北側の清水焼団地西方辺りではないかとの説もある。

　『京都府山科町誌』では「（田村麻呂の死を）天皇は大に哀惜したまひて、従二位を贈られ、當郷の栗栖野村の水陸田、山林三町を賜ひて、墓地となさしめ、且つ詔せられて、その屍を棺中に立てしめ、甲冑を被らしめ、剣矛、弓箭を帯びしめ、西平安城に向つて土葬せしめられた。これ田村麿の忠烈武勇の威望によつて、永く平安京を鎮護せしめたまはん御意思であつたことと拝察せられる。」（『京都府山科町誌』４０ページ）と語っている。（鏡山次郎）