鏡山次郎のやましな　温故知新

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鏡山次郎　作

街並みの中に、ひっそりと偉大な先人達の足跡が刻まれている････実如上人と証如上人の墓【大宅学区】

実如上人・証如上人墓（大宅学区）

　この作品は、京都市山科区役所の公式アプリ「やましなプラス＋」のコラムに掲載された鏡山次郎の作品を、山科区役所の了解を得て掲載しているものです。

　都市化していく山科だが、そんな街並みのなかにも、歴史を刻んだ様々な足跡が残っている。

　東野中井ノ上町の本願寺山科別院墓地の中に、実如（實如・じつにょ）上人と証如（證如・しょうにょ）上人の墓が二つ並んで祀られている。いずれも中世の山科本願寺で活躍した人たちである。

　山科本願寺５３年の歴史の中で、宗主（門首）であったのは、蓮如上人と実如上人、証如上人の３名である。特に９世の実如上人は３６年間の長きにわたって、この山科本願寺を支えた。

　実如上人は、長禄２年（１４５８）に生まれ、大永５年（１５２５）に没している。室町時代中期から戦国時代にかけての浄土真宗の僧で、山科本願寺を建立した蓮如上人の第８子にあたる。延徳８年（１４８９）、父の蓮如上人の隠居にともない、本願寺を継承し第９世となった。

　明応８年（１４９９）に蓮如上人が亡くなった後も、父の代に急激に拡大した教団を維持・発展させる必要があり、そのため、管領（かんりょう：室町幕府に将軍を助け政務を統括した役職）であった細川政元（まさもと）との関係維持などに苦労したという。

　また証如上人は、永正１３年（１５１６）に生まれ、大永５年（１５２５）祖父実如上人の跡を継ぎ、本願寺第１０世となった。本来は父、円如（圓如・えんにょ）上人が跡を継ぐべきだったが、実如上人からの職を引き継ぐ前に死去したために、その子であった証如上人が継いだのである。

　天文元年（１５３２）８月２３日から２４日にかけて、細川晴元・六角定頼・京都の法華一揆の連合軍により、山科本願寺は焼亡する。これにより山科本願寺を追われた証如上人は、居所を大坂御坊へ移して大坂本願寺とし、新たな教団の本拠地とした。証如上人は、天文２３年（１５５４）に３９歳の若さで死去した。あとを１２歳の長男の顕如上人が継いでいる。

　山科には、西野の御廟所に蓮如上人が眠るほか、東野には実如上人、証如上人の墓があり、さらに小山には円如上人が眠っている。日本有数と言われる宗教集団の偉大な先人達の足跡が刻まれている地が、この山科であると言えるだろう。

　私が、蓮如・実如・円如・証如と呼ばずに、あえて蓮如上人などと「上人」を付けて呼ぶのは、あるお寺のご住職から「学者や研究家の人たちは、よく蓮如などと呼び捨てにするが、私たちにとっては聖人であることを忘れないで欲しい」という注意を受けたからだ。なるほどそうだとも思う。「上人」とは「知徳を備えている、秀れた僧」という意味だ。それ以来、秀れた山科の先人たちへの尊敬の気持ちを込めて、私は「上人」という言葉を付している。

（鏡山次郎）