鏡山次郎のやましな　温故知新

０２０

鏡山次郎　作

１００年にわたり水難から子ども達を守ってくれているお地蔵さま
（安朱・母子地蔵）

安朱・母子地蔵尊

　この作品は、京都市山科区役所の公式アプリ「やましなプラス＋」のコラムに掲載された鏡山次郎の作品を、山科区役所の了解を得て掲載しているものです。

　山科疏水や安朱地域を案内する時、ここは必ず紹介する。１００年にわたって水難から子ども達を守ってくれているお地蔵さまだ。


　山科疏水、安朱橋の北岸沿いに、地元の人から「母子地蔵（ははこじぞう）」と呼ばれる地蔵が祀られている。

　この母子地蔵は、琵琶湖疏水の完成から９年後の明治３６年（１９０３）に、疏水に落ちて水死する子どもが相次いだことに胸を痛めた善兵衛という船頭さんが、安朱の住民の協力を得て、疏水のほとりに地蔵堂をつくり祀ったものだ。

　船頭の善兵衛という人は、今の滋賀県高島市から琵琶湖を渡り、大津から疏水で京都や大阪に織物を運んでいたという。地元の方は「疏水べりには今のような立派な柵がなかった。うっかり足を滑らせて落ちると、小さな子は命を失ったのだろう」という。この母子地蔵のお堂は、平成２０年（２００８）５月に、地元の方々の浄財で新たに再建された。

　また、疏水の転落防止の安全柵の設置は、昭和４５年（１９７０）からようやく始まったが、現在の柵は、平成６年（１９９４）から平成７年（１９９５）にかけて新たに付け替えられたものである。

　毎年、母子地蔵の前で地蔵盆があり、子ども達が「数珠繰り（数珠廻し）」を楽しんでいる。

（鏡山次郎）